2012年11月22日

071:風邪とインフルエンザに注意

慈温堂を移転して約1ヶ月が経過しました。そろそろ気候も寒さを増してきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、この時期にトピックとして取り上げることはインフルエンザのことでしょうか。まだ、今期はインフルエンザの患者さんを診てはいないのですが、これから流行る時期になりますので、注意を促しておこうと思います。以前のトピックでも書いたことがあり、重複する部分もあると思いますが、始めてトピックを目にする方もいらっしゃるはずですので、一応記載しておきます。

まずインフルエンザや風邪の予防として大切なことは、普段から抵抗力を落とさないようにすることです。つまり、喫煙、アルコールの過剰摂取、夜更かしによる睡眠不足等の悪い生活習慣や好き嫌いによる偏った食生活などを改めることです。あまりにもあたりまえすぎているし、「わかっちゃいるけどやめられない」ということもあり、実行できていない方も多いと思います。しかし、自分の健康を守るにはこの当たり前のことから始めなければなりません。さて、次に大切なことは、皆さんもよくご存じのことですが、手洗い、うがいです。毎日帰宅したら、手を抜かずにきちんとやることです。手や咽喉部についているウイルスや細菌をその感染が起きる前に洗い流してしまうことです。実に当たり前のことです。しかし、私を含めて多くの人が忙しさでつい簡単に済ませてしまい、十分に洗い流してないことが多いのではないでしょうか?
さて、その次に大切なことは、身体を冷やさないこと、季節に応じて服装を変えて寒さの対策をすることです。また、人の多く集まる場所には出来るだけ近づかないことも大事であり、それができない場合で、気管の弱い方はなるべくマスクを着用するなど普段から心がけるべきでしょう。ウイルスや細菌の大きさからするとマスクの穴は大きすぎて予防はできないということも言われますが、ウイルスや細菌が1個で漂っているというよりも実際は、ある塊として漂っていると考えられますので、マスク着用は100%とは言えないまでも第一段階で予防するには有効な方法と考えられます。そして帰宅してからの手洗い・うがいは防ぎきれなかった原因菌の除去に大切な習慣です。

また、毎年今の時期に各医療機関で行われているインフルエンザの予防接種ですが、これは厚生労働省のホームページで詳しく記載がありますので、それを見てもらえばよいのですが、簡単に言うならば、インフルエンザは毎年顔つきを変えるので、今までの統計から推測できるその冬に流行りそうなインフルエンザに効く予防薬を接種して予め抗体を身体に作り出しておこうというものです。抗体の出来方も個人差があるようですが、約2週間くらいはかかるようなので、体調の良いときに早めに接種しておくことが推奨されています。ここで注意しておきたいことは、(特に高齢者の方ですが)たまに勘違いしている人がいて、インフルエンザの予防接種をするともう風邪をひかないと思っている方がいます。しかし、インフルエンザは普通の風邪とは違い、症状がきつく出ることと広範囲に広がるという性質を持っています。「スペイン風邪」「香港風邪」という名で知られるように世界中で大流行して猛威をふるい、多くの死者をだしたことは有名です。それを防ぐ目的で、毎年予防接種がなされるわけですが、これをやっても風邪にはかかります。風邪の原因ウイルスは無数に存在するからです。従って、予防接種をしても既述した普段からの注意が大切となります。
また、高齢者(特に65歳以上)や重篤な基礎疾患を持っている方に接種することが推奨されている肺炎球菌ワクチンというものがあります。高齢者で肺炎となる原因菌の多くの割合を占める肺炎球菌に対する予防接種です。一度接種すると5年間くらいは有効とされていますので、希望の方は行きつけの医療機関で相談するとよいでしょう。若干の注意としてはインフルエンザの予防接種とは1週間程開ける必要があることと、これを接種したら、肺炎にかからないということではないです。他の原因菌もありますので、勘違いしないようお気を付け下さい

さて、それでも風邪やインフルエンザにかかってしまったらどうするか?
「運命と思ってあきらめ、すべて自然の成り行きに任せる」というのも一つの達観した姿勢と思いますが、なかなかこういった人は少ないと思います。

今では風邪あるいはインフルエンザに罹患したら、たいていは西洋医学の医療機関を受診して風邪薬や抗インフルエンザ薬をもらい、感染の原因菌が細菌ということがはっきりしていれば、抗生物質等をもらって治療することが普通のやり方でしょう。
西洋薬は抗インフルエンザ薬にしろ、抗生物質にしろ、その原因菌に直接働きかけて治療するものです。そのため、治療効果も出やすいのですが、それなりにつよい作用をするので、副作用の心配も常につきまといます。またその薬の攻撃をかわして生き残った原因菌はそれらの薬に対抗できる能力を身につけることがあります。いわゆる耐性菌や耐性ウイルス(株)の出現です。これはそういった薬を乱用すればするほど出現の確率も高くなります。

こういう西洋薬の問題を気にする人は漢方薬を見直すと良いかも知れません。ようやく話したい話題にたどり着きました。

人間の身体は本来、その原因菌がウイルスであれ、細菌であれ、これに対抗する抗体を作ってそれらを排除しようとする機構(いわゆる免疫機構)が働きます。一般的に普通の風邪であれば、身体の防衛機構が働き、約1週間くらいで治っていくものです。ただし、高齢者や抵抗力の落ちている人の場合は長引くこともあります。

漢方薬は昔からこのような急性熱性疾患に対応する治療方法がよく考えられているもので、原因菌に直接働きかけるというよりもどちらかというと身体の免疫機構が働きやすい環境を整えていく作用が期待されるものです。

風邪やインフルエンザの時期ですので、これらについて少し話しておきたいとおもいます。

身体の抵抗力によっても違いはありますが、一般的に風邪などの感染症の初期には身体は温かくして発汗を促す方向に働きかけるとよいことが知られています。実際に身体も対抗している状態として熱を出してきます。上手に汗をかくと自然な解熱を促し、風邪でしばしば伴う節々の痛みも一晩でかなり緩和されます。もちろん体温が上がり、発汗を促すので脱水傾向になりますから水分補給も大事です。

「風邪の初期には葛根湯を使う」というのを聞いた人もいるかもしれません。葛根湯は近代漢方的には強汗方湯の部類に属し、身体を温め、発汗を促す作用があります。この強汗方湯の中には麻黄湯というものもあり、以前これがインフルエンザに有効であるという記事をどこかで見た人もいるかもしれません。麻黄湯はどちらかというと葛根湯よりも発汗作用が強力にでるものです。麻黄湯と葛根湯に共通に含まれる生薬に麻黄と桂枝があります。近代漢方的には麻黄は心臓の拍動を強め、全身への血流の増大作用で、桂枝は皮膚へのの血流の吸引作用が推定されます。この2つの組み合わせによって、汗を出しやすくする効果が出てくると考えています。西洋医学的にも麻黄の成分のエフェドリンが心臓の拍動を強める作用があることや桂枝の末梢血管の拡張作用が知られています。風邪などの初期にこれらの漢方薬を上手に使うとよいでしょう。

但し気をつけて起きたいことは、麻黄という生薬は子供には比較的相性がよいのですが、人によってはこの心臓の拍動作用が強くでて、眠れなくなるなどの副作用や、胃部の不快感を感じる人もいます。また血圧の高めな高齢者にも注意する必要がありますので、全員にお勧めという訳ではありません。強汗方湯という名前からもわかるように比較的体力のしっかりした実証タイプに用いる薬です。心臓疾患や高血圧症のあるお年寄りや胃部の不快感がでる人にはより優しい働きをする桂枝湯などにしたり、咽の痛みや鼻水がひどい場合などには麻黄附子細辛湯や小青竜湯などを考慮することもあります。

また身体を暖かくするのによい工夫として、寝る時に乾いたタオルを首に巻くということをお勧めします。
私が小さいとき、祖母が風邪などを引くとよく布団の他にタオルを鼻までかぶって寝ている姿を見ました。何故あんな苦しそうなことをするのだろうと不思議に思っていましたが、ある日私も風邪を引いて寒気を感じる時にまねをしてタオルを鼻までかぶったら、身体の温かさがずいぶん違うことがわかりました。それ以来、風邪を引く度にタオルを使うようになりましたが、何分鼻にまでかけると息苦しくなるのが難点でした。
親譲りの体質か、ある年齢を過ぎてからは、「気管が弱くなってきたなぁ」という自覚が出てきましたので、首にタオルを巻くように変更してみたら、暖かさは維持されて、息苦しくもないので、非常によいことがわかりました。以前咳喘息と思われる症状に見舞われたことがあり、時間がかかってようやく治ってからは、首回りを暖かくした方がよいと考え、私は今では毎日寝る時にはタオルを必ず首にまいています。これが気管をかなり守っている感じがあります。皆さんも風邪に罹患して寒さを感じる場合や気管に自信がない方は是非実行してみてください。

これから、ますます寒さの厳しくなる時期に突入していきますので、上記のことを参考にこの冬も乗り切っていかれますようお祈り申し上げます。


(遠田弘一)
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