2013年04月30日

074:再生の年にいい汗を

 日本に大きな傷跡を残し、まだその余韻が続く東日本大震災、あれから2年が経過しました。まだ現地の人たちにとっては、現在進行形であり、過去の出来事としては語れないと思いますが、多くの人が何とか未来に向けて動き出し、日本人の多くの意識も再生に向けて歩んでいる今日この頃かと思います。私も昨年10月に慈温堂を移転し、今年から新たな再出発として歩みを進めてきております。

 慈温堂は自宅の最寄りの駅から2駅ほどになったので、弛んだ身体に渇を入れるいい状況と思い、週2回の慈温堂へは雨の日以外は自宅から歩いて通うようにしています。片道約40分ですので、これからの季節はいい汗をかけそうです。また1日1回はできるだけストレッチングなどもして、身体の柔軟性にも気を配るようにしています。

 私の青春時代(この言葉自体も何やら古くさいひびきがしますが・・・)にリアルタイムでやっていた学園ドラマの主題歌に「涙は心の汗さ・・・」というフレーズがありました。
 身体の汗としては上記の運動習慣で良しとして、“心の汗”としてやっていることは、感動のドラマをみて目を潤ませるようにしています。今でもまだ韓流ドラマに捕まっています。

 種々の韓流の時代劇を見てきましたが、今までで一番気に入ったのは「トンイ」です。すべての作品を見たわけではないので、お気に入り順位は今後変わるかもしれませんが・・・。
 この主演女優さんはハン・ヒョジュさんで、この人はユン・ソクホ監督の四季シリーズ完結編『春のワルツ』で新人から主人公として抜擢された人です。このドラマの時から何となく、この女優さんが気に入っていたことも自分の中の当選順位に影響したかもしれません。そして「トンイ」は今もNHK総合テレビで再放映されています。
 以前、BSで放映されていたときに全てを見終わったのですが、最近また見たくなり、かといって、テレビ放送では週に1回が待ちきれず、DVDで見ています。大筋の流れは覚えていても細かい場面までは忘れているので、また結構楽しめています。

 「トンイ」は17世紀後期から18世紀前期までの李氏朝鮮時代に生きていた人で、実際の歴史はドラマ通りではないにしろ、低い身分から第21代の朝鮮王である英祖(ヨンジョ)の生母になるという経過を辿った人のようです。
 前半は最下層の身分と状況から、生まれ持った才覚と勇気によって危機を乗り越え、宮廷でしっかりした立場を築いていきます。つまりサクセスストーリーの要素と王様とのふれあい(恋愛の要素)も含まれています。
 後半は上記の英祖の子供時代と絡ませて、話が進んでいきます。やはり子供とのふれあいの場面が出てくると、親としては自分の子供にだぶって見えてくるので、目が“うるうる”となることが多いです。

 この歴史ドラマというのは日本にしろ、韓国にしろ、その他の国でも、注意しなければならないのは、実在する人物やその時代背景を再現しているかのようですが、実際の歴史ではないということです(実際の歴史は誰にもわかりません)。名前自体も実名を使っている場合もあれば、フィクションのこともあります。そして、例外もありますが、大抵の場合、主人公は善として描かれ、種々の考えや行動は多くの人が感情移入しやすいように善的な要素がふんだんに盛り込まれていて、仮に悪的な行動を取る場合でもそこに至るまでのやむを得ない状況を描き、主人公の行動に誰もが同情し、うなずくように描かれています。一方、これに敵対する方は、始終悪い考えと行動のみで染まっているように描かれていますし、キャスティングも一見して悪いヤツかやばそうなヤツが選ばれています。メイクや色使いもこの「悪」を示すのに上手に使われています。

 本来、人間は誰しもが善的な要素、悪的な要素が半々くらいにはあるはずです。ある状況で、ある立場からすれば、その行動が善のように見えるが、反対の立場や違った状況からすれば、悪にもなり得るものです。だから、登場人物が、白黒がはっきりしているというのもフィクションだなぁという考えがふと頭をよぎります。しかし、それは置いておいて、この「勧善懲悪」的な構成は日本人の好きな長寿番組「水戸黄門」にも通じるものです。始めは悪人が幅をきかせて大手を振っているのに、黄門様が出てきて、印籠を出せば、立ち所に悪人がバッタバッタと倒されて、目出度し目出度しというあれです。もっとも黄門様は1時間で完結しますが、この「トンイ」は敵対者によって仕組まれた事件で主人公が窮地に陥り(スリルとサスペンスの要素です)、それを主人公が知恵と勇気で謎を究明して解決し、敵に一泡吹かせるというもので、これが数話にまたがってようやく溜飲が下げられる仕組みになっています。一つの場面でも一気に全部を見せるのではなく、細切れにして、あとから回想シーンでフラッシュバックして見せて事件の解決につながるシーンが組み込まれていく作りです。

 現実にはあり得ないような状況設定や仕掛けも盛りだくさんで、冷めて突っ込もうと思えば、いくらでも突っ込む部分もあります。しかし、そんなことをするより、ドラマの流れにすっかり身をまかせ、心の底で感動し、笑い、悲しみ、ほほえみ、目を潤ませた方がよほど心のカタルシスに役立ちそうです。

 まぁ、いずれにしろ、皆さんもいい(心の)汗を流したい場合は様々な要素が盛り込まれたこの「トンイ」がお勧めです。続きがどうしても見たくなり、途中で止められない作りですので、睡眠不足には気をつけましょうね。

(遠田弘一)
posted by ..... at 23:21| Topics